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飲食店開業の物件探しで絶対に避けたい契約リスク【実話】

飲食店開業の物件探しで図面と資金計画を確認する開業者とコンサルタント
飲食店の物件探しでは、立地だけでなく資金計画と契約条件の確認が重要です。

飲食店を開業するためには、店舗物件を確保しなければなりません。

しかし、東京都内の好条件の飲食店物件は、見つけること以上に「契約すること」が難しくなっています。

特に、駅から徒歩5分圏内、1階路面店、または地下・2階でも専用階段がある居抜き物件には、個人の新規開業者だけでなく、既存の飲食企業や他業種の法人も申し込みます。

その結果、物件の内容や申込順位だけでなく、契約資金をすぐに支払えるかどうかが、入居者選定を左右することがあります。

今回は、2025年4月から1年以上にわたり、東京都内を中心に50件以上の飲食店物件を検討した、新規開業者の実話をご紹介します。

この事例から分かったことは、個人の新規開業者が資金力のある企業と同じ条件で競争すると、好条件の物件を獲得するのが非常に難しいという現実です。

一方で、物件を逃したくないからといって、融資の見通しが立たないまま契約することも避けなければなりません。

1.結論:新規開業者は資金力と支払いの早さで不利になる

東京都内の好条件の飲食店物件では、個人の新規開業者は、資金力と契約までのスピードで既存企業に負ける可能性があります。

これは、事業計画や店舗コンセプトが劣っていたからではありません。貸主にとっては、入居後に安定して家賃を支払えるか、契約に必要な費用を期限までに支払えるかが重要です。

そのため、契約費用を自己資金で一括して支払える企業、既存事業の決算実績がある企業、金融機関との取引実績がある企業、複数店舗の運営実績がある企業などは有利になる傾向があります。

一方、個人の新規開業者は、物件が決まってから融資を申し込み、審査結果を待つケースが多くなります。この時間差が、好条件の物件を獲得できない原因になることがあります。

2.自己資金700万円で始めた飲食店の物件探し

今回のクライアントは、飲食店を新規開業するため、2025年4月から物件探しを開始しました。この事業に投資するために用意した自己資金は700万円です。

物件決定後に融資を受けて開業資金を調達し、社員を雇用して、将来的には店舗展開を目指す計画でした。

物件の主な希望条件は次のとおりです。

  • 店舗面積18坪以上
  • 社員を雇用できる売上規模を確保できること
  • 将来の店舗展開につながる立地であること
  • 初期投資を抑えられる居抜き物件であること
  • 店舗コンセプトと商圏が合っていること

候補エリアは、代官山、池袋、渋谷、水天宮前、目黒、神楽坂、学芸大学、高田馬場、新宿、西早稲田、新宿御苑、四谷、西麻布、麻布、虎ノ門、六本木、白金などです。

1年以上にわたり、50件以上の物件情報を確認し、現地調査や内見を重ねました。しかし、希望条件を満たし、実際に申し込みまで進められる物件は決して多くありませんでした。

3.50件以上検討しても物件が決まらなかった理由

50件以上の物件を検討した中で、実際に申し込んだのは、代官山、渋谷、西早稲田、四谷、水天宮前、虎ノ門の6物件です。

しかし、6物件とも契約には至りませんでした。主な理由は次の3つです。

  • 貸主が新規開業者より既存企業を選んだ
  • ほかの申込者が契約費用を先に用意した
  • 融資審査を待つ間に、ほかの申込者との契約が進んだ

飲食店物件では、最初に申し込めば必ず契約できるとは限りません。貸主は、信用力、事業実績、資金力、保証内容、契約までのスピードなどを総合的に判断します。

4.実際に申し込んだ6件の飲食店物件

エリア 立地・物件条件 申込状況 契約できなかった主な理由
代官山 駅徒歩1分・1階・ダイニング居抜き 保証会社審査通過 貸主が新規開業者以外を選定
渋谷 駅徒歩8分・地下1階・ステーキ店居抜き 申込順位1番 契約資金を一括で用意した会社が契約
西早稲田 駅徒歩圏・1階・中華料理店居抜き 申込順位1番・保証会社審査通過 融資面談前に別会社が契約
四谷 駅徒歩8分・1階・ダイニング居抜き 複数申込者による選定 資金をすぐに用意できる会社が契約
水天宮前 駅近・商業施設2階・鉄板焼き店居抜き 申込翌日に競合が進行 別会社が契約費用を用意
虎ノ門 駅徒歩5分・1階・カフェ居抜き 申込順位1番・保証会社審査通過 別会社が契約費用を先に用意

保証会社の審査に通過しても、貸主の入居審査を必ず通過できるわけではありません。また、融資手続きを進めていても、その間、物件を確保してもらえるとは限りません。

代官山の飲食店物件で検討した厨房と客席のレイアウト変更イメージ図
代官山の候補物件では、契約検討と並行して、厨房・カウンター・客席を含む店舗レイアウトまで作成しました。

飲食店の物件選定では、立地や家賃だけでなく、希望する厨房設備と必要な客席数を実際の区画に配置できるかを、契約前に確認する必要があります。物件条件がよく見えても、厨房動線や客席配置が成立しなければ、想定した売上や店舗運営を実現できない可能性があります。

5.申込順位が1番でも契約できるとは限らない

飲食店の居抜き物件で厨房設備と図面を確認する開業者とコンサルタント
物件契約前には、申込順位だけでなく、設備条件、資金計画、契約までのスケジュールも確認します。

飲食店の物件探しでは、「申込順位1番」という言葉だけで安心してはいけません。申込順位が1番でも、それだけで契約が保証されるわけではないからです。

貸主や管理会社は、一般的に次の条件を確認します。

  • 申込者の資金力と家賃の支払い能力
  • 既存事業や飲食店の運営実績
  • 事業計画の実現可能性
  • 保証会社の審査結果と保証内容
  • 契約費用を支払える時期
  • 店舗業態と建物との相性
  • 臭気、煙、騒音などのリスク

申込前には、自分が何番目かだけでなく、貸主がどのような基準で入居者を決めるのか、申込順位にどこまで優先性があるのかを仲介会社へ確認する必要があります。

6.飲食店の物件契約で絶対にやってはいけないこと

物件を逃したくないからといって、「融資はおそらく通るだろう」という見込みだけで、資金計画を確認せずに契約してはいけません。

飲食店の物件契約では、保証金、礼金、仲介手数料、前家賃、保証会社利用料、造作譲渡代金などが必要になる場合があります。物件によっては、これらの契約費用だけで自己資金の大部分を使うことになります。

その状態で融資を受けられなければ、内装工事、厨房機器、採用、仕入れ、広告宣伝、開業後の運転資金を確保できません。物件を契約できても、店舗を開業できなければ意味がありません。

7.融資の見通しが立たないまま契約するリスク

空家賃が発生する

融資が決まらなければ、設計や工事を正式に発注できないことがあります。開業準備が進まなくても、契約開始日から家賃は発生します。

開業に必要な資金が不足する

物件契約に自己資金のほとんどを使うと、融資額が希望を下回った場合に、工事費や厨房機器費、運転資金が不足します。

契約解除に費用がかかる

融資を受けられず開業を断念しても、物件契約が自動的に解除されるわけではありません。解約予告期間や違約金の条件によっては、営業していない店舗の家賃を支払い続ける可能性があります。

解約予告期間は契約ごとに異なり、店舗物件では6か月前の予告が定められているケースもあります。契約前に賃貸借契約書の解約条件と違約金を確認してください。

なお、融資審査では出店予定物件の資料や工事見積書などを求められることがあります。そのため、物件探し、事業計画、資金計画、融資相談を並行して進め、契約前に資金調達の実現可能性をできる限り確認することが重要です。

8.新規開業者が物件を獲得するための5つの対策

1.物件探しの前に資金計画を作る

物件取得費、設計・工事費、厨房機器費、備品費、採用費、販促費、開業後の運転資金まで含めた資金計画を作り、物件に使える上限額を決めます。

2.金融機関へ事前に相談する

事業計画書、自己資金を確認できる資料、職務経歴、投資計画などを事前に準備し、物件候補が出たら速やかに相談できる状態を整えます。ただし、事前相談や面談を行っても、融資実行が保証されるわけではありません。

3.申込書類を事前に準備する

本人確認書類、経歴書、事業計画書、資金計画書、預金残高を確認できる資料、会社資料などを準備しておけば、申込までの時間を短縮できます。

4.出店エリアを広げる

東京都心の主要駅だけに限定せず、山手線の外側、東京都下、神奈川県、埼玉県、千葉県の主要駅なども含めて検討すると、家賃、物件取得費、競合数のバランスが改善する可能性があります。

重要なのは、都心に出店することではなく、計画した売上と利益を実現できる商圏へ出店することです。

5.家賃と立地だけで判断しない

希望業態で営業できるか、給排水・ガス・電気容量が足りるか、排気・給気設備を設置できるか、営業時間や看板に制限がないか、厨房・空調設備が使用できるかなどを契約前に確認します。

居抜き物件だから、必ず工事費を抑えられるとは限りません。既存設備の修理や交換、給排水・排気設備の改修が必要になれば、多額の工事費がかかることもあります。

9.最終的に町田の物件を契約できた理由

1年以上の物件探しを経て、このクライアントは最終的に町田で店舗物件を契約しました。

東京都心部と比較して家賃と物件取得費を抑えやすく、申込時の競争も比較的少なかったことが、契約につながった要因です。

重要なポイントは、当初希望していた東京都心部に固執せず、事業が成立する可能性のあるエリアまで物件探しの範囲を広げたことです。

エリアを変更することは、出店計画の妥協とは限りません。家賃と初期投資を抑え、開業後の運転資金を確保できるのであれば、経営上は合理的な選択になる場合があります。

10.飲食店の物件探しは出店エリアと資金計画を同時に考える

  • 申込順位が1番でも契約できるとは限らない
  • 保証会社の審査通過と貸主の承諾は別である
  • 好条件の物件ほど資金力のある企業と競合する
  • 物件契約費用だけで自己資金を使い切らない
  • 融資を見込んだ見切り発車で契約しない
  • 契約前に解約予告期間と違約金を確認する
  • 物件探しと融資準備を並行して進める
  • 都心の主要駅だけに出店エリアを限定しない
  • 家賃や立地だけでなく事業計画との整合性を確認する
  • 居抜き物件でも設備と工事費の確認を省略しない

本当に重要なのは、契約後に必要な資金を残し、無理のない条件で開業し、店舗経営を継続できることです。

物件を逃すことよりも、開業できない物件を契約してしまうことのほうが、はるかに大きな損失になります。

11.開業準備の段階に合わせた2つの支援

具体的に開業準備を進めたい方

物件探しや融資準備を始めており、具体的に飲食店の開業へ取り組みたい方には、個別の飲食店開業支援をご用意しています。

出店エリアの選定、商圏調査、事業計画、資金計画、融資準備、物件診断、厨房・店舗設計、メニュー開発、開業後の集客まで、開業計画に合わせて支援します。

飲食店開業支援について問い合わせる

将来の開業に向けて学びたい方

現在すぐに開業する予定はないものの、将来、自分の飲食店を持ちたい方には、飲食店開業基礎講座をご用意しています。

物件探しを始める前に、物件の見方、出店エリアの選び方、エリアマーケティング、店舗コンセプト、事業計画、資金計画などを体系的に学べます。

飲食店開業基礎講座の詳細を見る


※融資の可否や賃貸借契約の条件は、申込者、金融機関、貸主、物件によって異なります。契約前には金融機関、不動産会社、必要に応じて弁護士などの専門家へご確認ください。

執筆者

IdeaREST代表 門 浩司

飲食店・ホテル・商業施設の開業プロデュース、コンサルティングに34年間従事。これまで700件を超える飲食店・ホテル・商業施設等の開業・再生・人材育成を支援。飲食店の物件選定、事業計画、資金計画、厨房設計、メニュー開発、集客、店舗運営まで、開業前から開業後を見据えた支援を行っている。

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